ある年齢になると、日本人が、とくに女性の好きな言葉に「凛(りん)」があります。しかし、その凛ってなんでしょう。言葉の意味はわかるとして、その実体は何でしょう。行為でしょうか心でしょうか。あるはそこから滲むものなのでしょうか。改めて考えるとわからない。「凛」 なぞの言葉を使いたがる人に限り、じつはすこしも凛としてなくて。
そう思っているとき、たまたまかの103歳の桃紅さんの「その日の墨」を夜、読みました。とても凛とした文です。そしてハッ、わかりました。凛は生き様、風説に耐え、苦しい時代を超えて生きるなかで得るものです。きっと、かの女の本を読むと清々しくなります。ぜひ一読を。ここ半世紀で日本人が忘れた大切を思い出させてくれるでしょう。とりとめもない自分史を書き、悦に入っている方には必読書かも。